15.ガリンペイロをやってみる

いまさら危険と言われても

マナウスで仕事を探していた。

危ないとはよく聞くが、以前からガリンペイロ(金採掘)に興味があった。
そんなときに、偶然同じホテルに泊まっていた、
サンパウロから出稼ぎに来ていたサントスさんと知り合う。
彼が丁度、ガリンペイロをやるとのことなので、
彼にお願いしてボスを紹介してもらった。
危険だとわかっていても、好奇心には抗えなかったわけだ。

さて、面接の約束を取り付けて、ボスのもとを訪ねる。
あのガリンペイロを束ねる親方だから、拳銃でも持って威嚇されるのかな、
とか思っていたが、以外にも人の良さそうなおじさんでビックリ。

無事働かせてもらうことになった。
その間、バイクはマナウスのホテルに停めさせてもらえることになった。

尚、この時ボスから、仕事中にやってはいけないこと3か条として、

「写真・身の上話・横取り」は絶対にするな、と言われた。
もし、これを破ったらどうなるのか…。

唯一撮らせてもらったのが、この写真だ。
最終日に街に出向いて撮った、ボスとサントスさんとの記念写真だ。

ガリンペイロをやってみて

現場となる金鉱はパラー州にあり、船と車で3日かけて移動することになる。

僕らのツルマ(仲間)は8人で、それぞれスコップ・ツルハシ・土運び・食事と役割が決まっている。
はじめは一番単純な土運びから命じられた。
約1か月半、ひたすら土を運び続けた。
砂金帯の土を一輪車に乗せ、流し台まで運ぶ。
言葉にすると簡単だか、かなりの重労働だ。

当初は土運びだけだったが、慣れてくるとサントスさんと一緒に、
ザルのようなものを揺すって、土と砂金を分離させる作業に加わった。
ここでようやく金に触れることができるわけだが、
「ここで横取りするヤツが多くて困るんだ」とのことで、
常に監視の目が光っている。

「ボスはやさしそうに見えるかもしれないが、約束を守らない者には厳しいゾ」
との忠告を受ける。
というのも、以前、金塊が出て、それを横取りして隠し持っていた人がいたそうだ。
それがボスに見つかってしまい、その後彼の行方を知る者はいないそうだ…。

実際、小石大の金塊が出ることもあるのだが、
ここで死にたくはないので、黙って素直に働いていた。

給料は完全歩合性で、出た金を仲買人・銀行に売り、ボスが5割、
残りの5割を8人で分ける形だ。
僕はまだ慣れていないので、取り分4%という契約だった。
週によって獲れ高にばらつきはあるが、日本でバイトするよりも、
数倍いい金額がもらえたと記憶している。
過去最高で1週間に5キロも出たことがあったらしい。
そのとき、流し台は金色に輝いていたそう。

ちなみにボスは、採掘権の確保と、ツルマの寝床・食事・道具の用意をしていた。

ガリンペイロの一日

1日のスケジュールはこんな感じだった。

7時起床
8時から仕事を開始
12時に小屋へ戻り、2時までシエスタ
4時におやつタイム
6時に作業終了、水シャワーを浴びる
7時に炊事係の食事を食べる
9時には寝る

食べて寝るだけの生活。そうじゃないと、とても体がもたない。

危険なサバドノィチェ

土曜日はみんなで早く仕事を切り上げ、街に遊びに行くのがお決まりだった。

まず、砂金を銀行か仲買人に売って現金を手に入れることから始まる。
といっても、多額の現金を持ち歩くのは危険なので
今夜の飲み代程度を握りしめ、酒場に向かう。その後は各々、自由に過ごす。
明日の出発時間までは、自由行動だ。

ここに、マフィア、売春婦、オカマなど、様々な面々が集まり、
ガリンペイロが吐き出したお金で潤う街。
安心安全なはずもなく、翌朝集まったら顔面傷だらけだったりと、ケンカが絶えない。
翌朝、時間になってもツルマの一人が現れなく
そのまま置いていくこともあったが
サントスさんに聞くと、「やられたんだろう」の一言で終わり。
そんな街なのだ。
警察もいるが、お金の力でどうにでもなるから、もはや無法地帯。
人を殺しても、森に埋めれば済む話だ。
ちなみに、ケンカの大半は、女の取り合いか、自慢話のエスカレートらしい。

ケンカだけではない。
多くのツルマが、幻覚作用のある薬?を飲んでいた。
それはもう、目がトロンとして逝っちゃってる。
とてもついていけないので、愛想笑いをしてスル―するほか無かった。

それと、困ったのはオカマちゃんだ。
やたらと僕の小屋に来て、触ったり抱きつかれたり、
「トロッカ、トロッカ」交代で貸してくれ、とせがまれる。
そのくせ、街に出るといそいそと娼婦小屋に出かけていく。
要するに、どっちもイケるらしい。
女がいなければ男を抱くし、どっちが男役ということもない。
相互扶助で成り立っているらしい。

もちろん僕は、丁重にお断りする。