ジャックさんとの出会い

右の白衣の男性は、ダルトンハイウェイのゲートで紹介された、
アンカレッジで毛皮屋を営む、ジャックキムさん。
トレードマークの黒縁メガネの奥には、いつもニコニコした目が光る、お喋り好きな紳士。
父が韓国人、母は日本人、奥様はフランス人、話せる言語は8言語。
日本語もある程度話せるので、三日間泊めてもらうなかで、
彼の若い頃の旅の話など、色々な話を聞かせてもらった。
しかし、難しい話となると言葉に詰まる様子もあり、
今となっては、「少しでも英語を学んでおくべきだったなぁ」と思ったり。
かの有名な冒険家、植村直己さんも、アラスカ遠征に行く際は、
決まって彼のもとを訪れていたらしい。
「直己が遭難したときは、私もセスナを出して捜索したが、直己がなぜ遭難したか解らない。きっと自ら…?なんて思うときもあるよ」
と言って、植村直己が消息不明になったときのことを振り返っていた。
「地球人になりなさい」
彼とは色々な話をしたが、その中でも忘れられない言葉がある。
「ミツル、大きな物差しを持ちなさい。世界を測れる物差しです。モノの値打ちを判断する時、それが世界的に見て、どれだけの値打ちがあるのか判断する、地球人になりなさい」
「アナタは、これから世界を旅すると、色々な文化、価値観を知るでしょう。アナタは今よりきっと寂しくなります。アナタを理解できる人が居なくなるからです」
何か哲学的で難しいなと思ったが、この言葉は今でも鮮明に覚えている。
彼はこの言葉を、沢山の旅人に伝えているらしく、「定番フレーズ」とも言われるが、
僕にとっては、価値観、考え方に少なからぬ影響を与えた、とても大切な言葉だ。
この言葉はジャックさんからの贈り物として、今でも心に刻み込んでいる。
今はもう、お店を閉じてしまったらしい。
あの薄暗い店の奥から覗く、自慢げな笑顔を今でもはっきり覚えている。
